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新しい日本のファンド規制:平成27年(2015年)金融商品取引法改正に係る政令・内閣府令案等の公表及びパブリックコメントの実施

日付: 2015年12月16日
投資運用、ヘッジファンド、オルタナティブ投資

2015年5月27日、金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)の一部を改正する法律案[1]が国会で可決され、この改正法は、遅くとも2016年6月3日までに施行されることとなりました(以下「2015年金商法改正」といいます。)。2015年金商法改正により、金商法63条が定める適格機関投資家等特例業務(いわゆるプロ向けファンド業務)、すなわち集団投資スキームにかかるライセンス規制の例外につき、その適用範囲が縮小され、かつ、この例外に該当するための要件が追加されます。適格機関投資家等特例業務は、従前より、内外のファンドに広く利用されており、外国のファンド業者にも、日本に居住する投資家に対して組合型ファンドを募集(私募)し、また、運用を行うにあたり、広く利用されてきました。

金商法の下、外国のファンド業者であっても、日本に居住する投資家に対して、組合型ファンドを募集し、また、かかるファンドの運用を行うためには、原則として、該当するライセンス(登録)が必要とされますが、適格機関投資家等特例業務に該当すれば、届け出を行うことで、かかるライセンス義務は、免除されることとなります。ここでいう組合型ファンドには、パートナーシップ、リミテッド・パートナーシップ、リミテッド・ライアビリティー・カンパニーとして構成されるファンドがあり、また、ファンドの構造によっては、米国法上のトラスト(信託)、すなわち、マサチューセッツ州法に基づくビジネス・トラストやデラウェア州法に基づくスタチュトリー・トラストといったトラストとして構成されるファンドが依拠している例もあります。なお、金融庁の最近の公表資料によれば、2015年3月末日現在、適格機関投資家等特例業務を行う旨届け出ている外国のファンド業者は749に上るとされます[2]

平成27年(2015年)金融商品取引法改正等に係る政令・内閣府令案等の公表及びパブリック・コメントの実施、今後の見通し
11月20日、金融庁は、2015年金商法改正を受け、関連する政令・内閣府令案及び監督指針案(以下「政省令改正案」といいます。)を公表し、また、政省令改正案につき、パブリック・コメントの募集を開始しました。パブリック・コメントは、2015年12月21日午後3時(日本標準時間)まで、受け付けられます。金融庁は、政省令改正案の公表するにあたり、その報道発表資料[3]において、パブリック・コメントで寄せられた意見を基に、政省令改正案の内容を調整し、かつ、既存の届出業者(現在、適格機関投資家等特例業務を行っている業者)に課される経過措置を確定する旨述べています。また、金融庁は、通常、受理したパブリック・コメントについて、金融庁の考え方や質問に対する回答を作成し、公表しますので、今回のパブリック・コメントは、ファンド業界にとって、今後、2015年金商法改正に対応するにあたり、当局の考え方を知る貴重な機会となります。

金融庁は、パブリック・コメント募集期間の終了後、同期間中に寄せられた意見や質問を考慮し、関連する政令・内閣府令及び監督指針の最終的な改正内容を決定します。こうした関連政省令等の最終的な改正内容、そして、通常、同時に公表される、金融庁のパブリック・コメントに対する回答や考え方により、2015年金商法改正後の適格機関投資家等特例業務の具体的な適用範囲、また、同業務を行うための具体的要件が確定されることになります。また、既存の届出業者に課される具体的経過措置についても、同様に確定されます。そして、タイムスケジュールとしては、金融庁は、遅くとも、2016年6月3日までには、こうした関連する政省令の改正を行い、2015年金商法改正が施行されることになります。さらに、既存の届出業者は、かかる施行日より6か月以内に、経過措置の届出を行うことが要求されます。

2015年金商法改正及び政省令改正案における主要な改正点
2015年金商法改正及び政省令改正案に含まれる主要な改正点には、①適格機関投資家等特例業務を行う旨の届出様式(様式第20号)の全面的改訂(ファンドや投資家の性質等、現行の様式から大幅に記載事項を追加)、②一定のファンド業者につき、欠格事由の導入(外国籍ファンドの関係では、特に、「国内における代表者」を定めていない場合、適格機関投資家等特例業務を行うことができないとされている点につき、注意が必要です。)、③一般投資家につき、一定の要件を満たす規模の投資家やファンド関係者以外の一般投資家は、適格機関投資家等特例業務の対象外とされ、適格機関投資家等特例業務において取り扱うことのできないとされること(ただし、いわゆるベンチャー・キャピタル・ファンドについては、一般投資家の範囲が緩和されています。)、④帳簿書類作成・保存義務及び年次事業報告書作成義務の新たな導入、⑤開示義務の新たな導入、及び⑥監督官庁による監督権限の強化が含まれます。これらの主要な改正点のうち、特に、②(欠格事由)、④(帳簿書類作成・保存義務、年次報告書作成義務)及び⑤(開示義務)等については、現在、適格機関投資家等特例業務を行う既存の届出業者にも適用があるということにつき、注意が必要です。なお、これらの改正点については、当事務所の従前のアラートもご参照ください。

今般の政省令改正案により、①(新しい様式第20号)、③(一般投資家の資格要件)及び④(帳簿書類の作成・保存、事業報告書の作成)について、ある程度は詳細が明らかになったものの、例えば、外国のファンド業者に求められる「国内における代表者を定め」るとは具体的にどのような者を指定すればよいかについて、明確ではありません。つまり、かかる「国内における代表者」が、その文言が示唆するとおり、当該ファンド業者の日本国内における業務につき代表権限を授権された者を指し、従って、今後、外国ファンド業者は、事実上、日本国内に拠点(例えば、日本支店や子会社等)を構えることまで要求されるのか、あるいは、社外の者(例えば、税理士や社外弁護士)を「国内における代表者」として選定することもできるのか、明らかではありません。さらに、かかる「国内における代表者」が要求された背景として、当局による監督や検査に際し、外国ファンド業者に対する実効的なコミュニケーション手段の確保が企図されたことが関連資料からうかがわれるものの、当局が「国内における代表者」に対して求める役割、また、かかる地位に伴う責任の有無についても明らかではありません。

一方、新規に導入される帳簿書類作成義務、年次事業報告書作成義務及び開示義務については、政省令改正案において、英語で行うことができるされるものの(すなわち、外国籍ファンドにつき、帳簿書類や事業報告書を日本語で作成することまでは要求されません。)、適格機関投資家等特例業務の対象となるファンドの運用にあたり、今後、こうした各種書類作成・開示義務に対応するためには、多くのファンドにおいて、業務フロー等の見直し、項目の追加を行う必要があるものとみられます。こうしたことからも、適格機関投資家等特例業務を行う旨届け出ているファンド業者は、2015年金商法改正による新しいファンド規制を念頭に、他のライセンス例外規定の適用の有無について検討することも含め、対応策を今から検討されるべきです。

[1] 同改正法案における主要な改正点については、当事務所の従前のアラートをご参照ください。なお、改正法案は、国会において修正されることなく可決されています。

[2]金融庁「ファンドモニタリング調査の集計結果について」(平成27年10月)
http://www.fsa.go.jp/news/26/syouken/20141007-1/01.pdf において公表。日本語のみ。)。なお、2015年3月末日現在、適格機関投資家等特例業務を行う旨届け出ている日本のファンド業者は2,351に上るとされます。

[3] http://www.fsa.go.jp/news/27/syouken/20151120-3.html

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